「奥様、今日限りに辞めさせて頂きます。」

矢口家で百合子にこの言葉を言ったお手伝いはこれで何十人目であろうか?
百合子の手許のお金がわずかとなっていたが、慎吾の介護にはお手伝いの手が必須であった。

しかし、毎日は雇えない・・・、つまりは、お手伝いが雇われた時には慎吾の身体は不清潔そのものであった。

百合子と智子は慎吾の食事を運ぶが、それは「介護」と言うものには遠いものであった。

安い賃金で汚い仕事で時間を超過しても、その分の賃金は出ないのであるので、どんどんとお手伝いになってくれる候補がいなくなっていた。

百合子はこの時とばかり、慎吾に常日頃の苦情を言うようになった。
智子は、汚い老人と化した父をもはや人間扱いしないでいた。

慎吾は矢口家の厄介者と変貌していったのである。

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