葬儀の日の夜

久しぶりに兄弟がゆっくりと話す機会ができたと光彦は思った。
不幸にも義姉は亡くなってしまったのだから、今後は自分も力になりたいと思う光彦であった。
二人きりになっても、あれほど子煩悩であった和彦が全く子供達の今後の話をしないでいた。

「兄さん、何か悩みがあるのか?」という光彦に促されるように和彦は自身の事を話しはじめた。
「兄さん、それは本気で言っているのか?!」いつにない高い口調で光彦は兄を叱責するかのように言った。
和彦は、正直に今までの事を話した。
光彦とて男である。
和彦の気持ちが全く理解できない訳ではなかった。

しかし、よりによって相手が矢口 智子と聞いた時に光彦が思わず声高に言ってしまったのである。
「兄さん、どんな女性でも反対はしないが、あの女性だけは駄目だ。兄さんも子供達も絶対に不幸になる!
僕は絶対に反対だ!
兄さんほどの人なら、いくらだって花嫁候補はいるよ。
絶対に家に入れてはいけないんだ!」

しかし、光彦が知らない和彦がそこにいたのである。
「もう会わないでおこう。僕はアメリカに行くよ。」と光彦はいつになく頑固な和彦に告げた。
半ば兄弟喧嘩となってしまった二人であった。

メルマガ会員募集中!